健康診断やストレスチェックの後、「再診」や「高ストレス」と診断された従業員は、産業医による面談指導を行ないます。もちろんメンタルケアが必要・体調が悪いといった従業員との面談も可能です。実際にセッティングをする場合、実施のタイミング・事前に何を準備しておくべきでしょうか。
ここでは産業医の面談を実施する上で、知っておきたい基本情報を紹介します。
月に1回訪問がある、または常駐している産業医が面談を実施するタイミングは以下の通りです。
基本的には、健康診断・ストレスチェックの後がメインです。
労働者の心の不調を未然に防止する「一次予防」を目的にしているストレスチェック。事業者は、労働者に対してストレスチェックを行うことで、職場環境改善に取り組み、働きやすい環境をつくらなくてはいけません。
高ストレスのため面接指導が必要であると判断された場合、本人に診断結果を通知。産業医と面談するか否かを確認します。面談を行うかは本人の判断になるため、事業者が本人に対して面談を受けるように指示することはできません。あくまで本人の意思になるため、人によっては面談を拒否する可能性もあります。
ただ高ストレスと判定された労働者には、これ以上悪化させないように面談を受けてもらうのが望ましいでしょう。ストレスの増大を抑制するために、産業医と一緒に対策を考えていくことが大切です。
時間外労働が月100時間を超え、かつ本人の申し出があれば産業医をはじめとした医師との面談を受けられます。1日8時間勤務の場合、毎日9時から23時まで仕事をして、いつの間にか時間外労働が100時間を超えていた…というケースは珍しくありません。1日5時間残業した日が20日以上あれば、100時間は軽く上回ってしまうのです。出社前の通勤時間も含めると約1時間程度はプラスされるため、睡眠時間が減ってしまう可能性もあります。
一般的に睡眠時間が5時間を切ってしまうと、うつ病や適応障害などの精神的な不調を引き起こす可能性が上がるといわれています。長時間労働者を見つけたら労働者の申し出の有無問わず、産業医による面接指導を受けさせることが望ましいでしょう。長時間労働になってしまう職場環境の改善と同時に、従業員のメンタルケアに対応することが事業者には求められます。職場に長時間労働者がいる場合は、なるべく産業医との面談をすすめるようにしてください。
全ての従業員に、産業医との面談を受ける権利があります。面談を希望している従業員がいるのであれば、相談したいことがあると予想できるため、積極的に面談機会を設けてあげることが大切。
従業員の中に長時間労働者や精神的な不調を感じている人がいる場合、企業側に責任が問われます。産業医面談を受けないでトラブルが発生すると、「安全配慮義務違反」という罰則が課されることに。仮に、過労死や過労自殺などの最悪のケースにつながった場合は、数千万円以上の損害賠償の支払いを命じられることもあります。
そのため、事業者や企業の人事担当者としては、産業医をうまく活用することがポイント。産業医と従業員と面談を取ってもらい、メンタルケアできるように対応していくことが大切です。面談を行っているのであれば、最悪の結末を自然に防げる可能性が高くなります。
休職を本人の個人的な問題と捉えた場当たり的な対処をしてしまうと、会社に対する不信感が生まれ、第二、第三の休職者を生む可能性があります。産業医は、休職希望の社員が発生した場合や、体調不良での欠勤、早退が続いているなどの状況が確認された場合に、休職面談を実施。一般的な流れとして、休職する本人が精神科を受診し、精神科医から「病気休業診断書」を出してもらった後に、産業医と面談をして休職手続きを行います。休職中は、精神科の主治医が定期的に面談を行いメンタルケアを実施。
また、復職中の面談も産業医が担当します。職場環境をよく知る産業医が最終的な決定権をもっているため、産業医の「問題ない」と判断すると復職が可能です。産業医が最終的な決定権をもっているのは、復職直後に休職・退職するリスクを減らすため。「今の状態であれば、これまでの勤務状況をこのように調整してもらえれば大丈夫」といった具体的な判断ができます。フルタイムでの復帰が難しいのであれば、短時間勤務から徐々に慣らしていくことも提案可能です。復職者のメンタルをケアしつつ、スムーズな復帰につなげるのが産業医の仕事ともいえるでしょう。
産業医と従業員の面談は、基本的に1対1で行なわれます。上司が同席してしまうと、従業員が遠慮して本音で話せなくなるため、推奨はされていません。産業医は従業員との信頼関係を結ぶ必要があるため、仮に会社が上司の同席を申し出ても、断られる可能性があります。そのため面談に上司を同席させるのは難しいと言えるでしょう。
ただ、面談が滞りなく進み、働き方の相談で上司の同席を依頼される場合があります。依頼を受けた際は、速やかに上司に依頼をしましょう。会社側ではなく、従業員ご本人から上司の同席を打診された場合は、産業医に相談するとスムーズです。
基本的に産業医との面談は、従業員が希望した場合に実施義務が課せられます。例えばストレスチェックで「高ストレス」と診断されたら、通知から1ヶ月以内に従業員は面談を依頼。事業者も1ヶ月以内に面談をセッティングします。
当人からの申出がなければ、法的義務はありません。行政指導にとどまり罰則はないのです。しかし何もフォローをせずに放置してしまうと、過労のリスクを高めることになります。会社として面談を促す方が望ましいでしょう。
産業医に面談してもらうことで、どんなメリットがあるのかを挙げてみました。
産業医による定期的なチェック・面談があると、そのたびに意識することができます。中には自分の面談日ではなくても、産業医の顔を見ただけでアドバイスされたことを思い出す人もいます。
健康診断での問診で精密検査が必要になった場合は、自らの意思で通院に踏み切ることが多いでしょう。しかし要観察となると検査や通院の必要がないので、ついつい自分の健康状態に意識が行かなくなりがちです。日常的に思い出す機会が増えれば、それだけ健康に留意することができます。塩分や糖分摂取を減らしたり、運動の機会を増やしたりして、健康維持に積極的になれるでしょう。
メンタルヘルスが不健康な状態を改善することで、仕事への意欲が湧いてきて効率アップにつながります。
精神的な落ち込みは外からみると一目瞭然なのだけど、本人は気づいていない、まだ大丈夫と考えている人も多いです。何となく疲れが溜まっている、休み明けは出勤したくないなど、誰にでもあり得ることが実はメンタルダウンの序章という場合が。放置しておくと悪化の一途をたどります。
産業医は守秘義務を負っているので、社員同士の人間関係や業務のトラブルを相談しやすい相手です。直接上司や同僚には言いにくいことを産業医に話すことで精神的な落ち込みから抜け出すきっかけになります。また、業務に関係のないプライベートな悩みも聞いてくれるので、「些細なこと」と遠慮せず積極的に活用すると良いでしょう。
肉体的・精神的疾病が減るとミスが少なくなり、作業効率がアップ。業務環境の改善につながります。
身体や心の悩みを抱えていると、仕事でやる気が出なくなったりミスを連発させたりが続き、作業効率が下がってしまいます。産業医との面談でそれらの悩みが改善されると、自然と前向きな心持ちになりミスを減少させることに。ストレスが軽減されることでパワハラやモラハラといった各種ハラスメント問題が減少し、職場環境の改善につながります。
産業医のアドバイスを取り入れながら業務改善を図ることで、人と業務のミスマッチが減ります。作業効率のアップはもちろん人間関係でもストレスの少ない職場環境が実現。疾病リスクも減り従業員自身が健康的に活動できる状態にシフトしていきます。
産業医との面談では守秘義務が発生します。しかし業務内容や配置など職場環境の変更といった会社が動くべき案件について、必要な提案・アドバイスを実施。会社はそれらを受けて、適切な業務分担や人事異動を検討することができるのです。
産業医に面談を依頼する場合、事前に以下の情報を用意しておきましょう。また、産業医に提出してもらう書類もあります。
事前に報告書・意見書のデータを用意しておくと、面談後スムーズに書類をもらえます。
「面談を実施すればOK」ではなく、産業医からの意見書をもとに時短勤務や休職などの処置を検討します。意見書に強制力はありませんが、対象の従業員が労務災害まで発展する可能性があるのです。産業医と連携し、面談を活用して従業員のケアをしていきましょう。
「余計に症状が悪化しそう」「産業医と面談するほどでもない」「会社からの評価が下がりそうだから受けたくない」産業医との面談を拒否されるケースはよく見受けられます。
会社側としては労働安全衛生法を守るためにも、高ストレスを抱えている従業員には、産業医との面談を受け入れて欲しいところ。面談を受けてもらうにはどうアプローチするべきか。その方法と、押さえておきたい注意点をご紹介いたします。
面談を拒否する従業員へのアプローチ方法は2つあります。
1.法律で定められている説明をする
理由も告げずに産業医との面談をお願いしても、首を縦に振る従業員は少ないでしょう。「なぜ産業医と面談をしなくてはならないのか」理由をきちんと説明して、納得してもらわなくてはいけません。
労働環境を良くするために設けられた法律で、従業員のコンディションを把握する必要がある。そのため協力してもらえないか。法律で決まっているからだと論理的に伝えると、説得はしやすくなるでしょう。
2.面談対象に選ばれた理由が本人にあることを理解してもらう
法律で決まっているから面談受けてほしいと伝えても「なぜ私が協力しなくてはいけないのか」と、協力を得られない場合もあります。その際は、面談対象に選ばれた理由が本人にあることを伝えると良いでしょう。責めるのではなく、あくまで事実として選ばれた理由を伝えると、原因は自分にあったと説得力が増します。
業務命令で面談を受けていただく方法もありますが、無理にお願いをしてしまうと、会社に不信感を抱かせるおそれがあります。自主的に面談を受けていただくためにも、打診する際のアプローチは丁寧に行ないましょう。
従業員に産業医との面談を打診する際に、押さえておきたい注意点があります。それは、産業医と精神科医が同義ではないことを説明する必要がある点です。勤務状況や面談を通して、業務改善を図るように従業員と会社側に指導を行なうのが産業医の仕事です。病名や治療内容を伝えることがお仕事ではありません。
産業医と精神科医を混合して、「そこまで深刻ではない」と、面談を拒否される可能性もあるため、打診の際は事前に説明を行なうと良いでしょう。従業員に面談を受けてもらうためにも、納得のいく説明ができるように事前に打診の切り出し方を考えておくとスムーズです。
拒否されることなく、素直に引き受けてもらった場合も注意しなくてはなりません。産業医との面談はあくまで相談の範囲に留まるため、症状の治療が行なわれる旨をしっかりと説明して、誤解がないようにしましょう。
ちょっと堅苦しく考えがちな産業医との面談。実は仕事の話だけでなく、持病やプライベートなことまで相談できるんです。真剣なものから気楽なものまで、産業医の先生はいろいろな相談事を受け付けてくれます。
会社勤めなら誰でも経験のある人事異動は、嬉しい場合もそうでない場合も意外に負担に感じることが多いものです。社内の話なのでわざわざ産業医を相談相手に指名するのではなく、ストレスチェックで面談対象になったときに出てくることが多いようです。
これらの問題に、産業医は丁寧にヒアリングします。相談者を否定することなくじっくり話を聞いてくれるので、社内の人間には話しにくいことも、第三者の立場で関わってくれる産業医なら話しやすいと言えるでしょう。
産業医は会社と契約して職場観察や個人面談等を行っています。なので「一対一で相談したことでも、全て会社に筒抜けになるのでは?」と心配して相談しない人もいます。
産業医には守秘義務があります。健康上の問題や緊急性がある場合を除き、会社へ報告する際には相談者の同意を得ることが条件です。報告するにしても上司への愚痴めいた発言や相談者の立場が悪くなるような発言については、割愛したり表現を和らげたりなどの配慮をしてくれます。産業医は決してスパイではありません。
人事担当者の仕事のひとつに、産業医がどうかかわってくれるかを社員に伝えることが挙げられます。パワハラやセクハラなどの温床にしないためにも、悩みを第三者である産業医に相談するのは有効な手。産業医を活用するために、まずは人事担当者から産業医の活動を知り、社員に伝える工夫をしましょう。
体力があり気持ちが安定しているときは、多少の長時間労働は苦にならないものです。しかし長時間労働が恒常化すると、いつの間にかストレスや悩みを生む原因となります。
上記のような状態が続いていたら、長時間労働が原因で健康問題が起きる可能性があります。
長時間労働や負荷のかかりすぎで起こる健康障害には、次のようなものがあります。
これらの健康問題は本人が自覚できていればまだ良いのですが、周囲がいくら指摘しても本人は無自覚だということがあります。上司や同僚はもちろん、労働衛生を担当するスタッフが気を配って観察することが大事。健康診断やストレスチェックは年に1度のことなので、それだけを過信せず産業医による毎月の職場訪問を大いに利用しましょう。
労働者自身が持病をもっている場合や健康診断で再検査になったなど、直近で健康について悩みを感じているなら利用してもらいやすいです。
通院中の人は比較的安心ですが、健康診断で指摘されたにも関わらず放置している場合が問題です。自覚症状がないからといって医師や産業医の面談を軽く見ていると、いつしか悪化してしまい後悔先に立たずという事態になりかねません。
なかには「検診のときに医者にさんざん言われたのでもう嫌だ」と思う人がいるのも事実。そんな人には相談する価値を伝えると良いでしょう。たとえばメタボリックシンドロームの相談だと、以下の質問をされることがあります。
このような感じでメンタルの問題が隠れていないかを確認することがあります。医療機関ではここまで丁寧な問診は難しいけれど、産業医なら対応可能です。気になる社員には積極的に相談できる場をセッティングしていきましょう。
職場の問題ではなくプライベートの変化で心身の変調をきたすことがあります。仕事と関係ないので産業医に相談することではないと思いがちですが、産業医が扱う相談内容は労働者が抱える悩み全般が対象です。
これらの悩みは仕事が原因とは言えないものです。なので仕事に影響が出てもなかなか相談できず抱え込み、さらに気分が落ち込んでしまうかもしれません。産業医はこういった相談を受けたとき、どうすれば相談者の悩みが改善するかを第一に対応します。信頼関係が深まるとどんどん話が広がり、「気がついたら恋愛相談をしてた」という人もいるほど。産業医は相談者の悩みを軽視することなく、真摯に、ときにフレンドリーに答えてくれます。
仕事やプライベートに関係なく、社員が抱える問題を解決できる場のひとつが産業医とのかかわりです。相談できる場はメンタルヘルスや離職問題の防波堤となり、上司と社員双方に風通しのよい職場環境を作る基盤にもなります。社内だけで問題解決を図るには限界があるので、産業医を絡めたメンタルヘルス対策が重要と言えます。産業医を積極的に活用するために、このサイトを役立ててください。
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