産業医を選任した後、「自社に合わない」「要望に沿わない」というケースは起こり得るでしょう。従業員数や業種によって、月に1回の訪問を行なう・常駐するなどの違いはありますが、産業医との連携は必要です。変更したい状況になった場合、どう対応すべきでしょうか。
ここでは、産業医の変更に必要な手続きを説明します。
産業医を選任する場合、14日以内に労働基準監督署へ選任の届け出を行なう必要があります。前任者を解任して新しい産業医を選任する場合も同様に、解任した日から14日以内に届け出を提出しましょう。
労働基準監督署に変更を依頼する場合は必要な書類を揃えたうえでの届け出が必要です。必要な書類は「産業医選任届出書(総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告様式)」というもので、厚生労働省のHPから入手できます。届け出後は機械で読み取りを行うので、白色度80%以上のA4普通紙を使いましょう。使用した紙が該当する様式ではなかった場合、再度届け出を提出しなければならないことがあります。
届出書を入手したら、前任の産業医の名前と辞任・解任の年月日を記入。さらに新たに選んだ産業医についての情報を必要な部分に記入したうえで労働基準監督署に提出します。
前任の産業医が辞任・解任した年月日と新たに選任した産業医の年月日は必ずしも同じ日付で統一する必要はありません。しかし、新任者の選出は善人が辞任・解任した日から14日以内に行わなければならないので注意しましょう。これは労働安全衛生規則第13条にも定められています。14日以上過ぎてしまった場合は日付を合わせようとせずに、正しい年月日を記入してください。
産業医の解除がうまくいかないケースがあった場合はどうすれば良いでしょうか。例えば長い間契約していた産業医の場合。契約を解除して新たな産業医を選任したくても、解除の手続きまでに多くの時間を要するか、結局新たな産業医に変更できずに終わってしまうというケースがありえるのです。このように何らかの理由ですぐに産業医を変更できない場合は、一時的に産業医の2名体制が取れます。
2名体制の産業医は通常3,000人以上の大企業で、さらに専属として選任されることがほとんどです。その条件に達していなくても、複数人の産業医との契約ができます。
一時的でも産業医を2名体制にすることで、現在契約している産業医を解除するための動きに進展が見られるように待つ時間が持てるでしょう。ですが産業医を2名に増やすことでのデメリットにも気を配らなければなりません。とくに気を付けるべきなのが、現在契約している産業医への配慮です。産業医を増員することで気分を害する可能性があるので注意しましょう。
「長い付き合いがある」「社長の知り合い」など、どうしても契約を解除できないケースはあるでしょう。その場合、産業医2名体制の方法をとることができます。自社の課題を理解し、きちんと改善に取り組んでくれる医師を見つけて新たに迎え入れるのも一つの手です。
気をつけたいのは、契約中の産業医との兼ね合いです。新しい医師と契約すると、契約中の方が「蔑ろにされている」「契約解除されるのでは?」と感じる可能性があります。しがらみが強くて変更できない場合、慎重に契約を進めなくてはいけません。
場合によっては名義貸しと思われるリスクも。名義だけで産業医が職務を遂行していないケースは、労働安全衛生法の違法行為に当たるためです。「兼ね合い」「名義貸しのリスク」の2点に注意し、産業医の2名体制をとるか判断しましょう。
「産業医を変更したい」と思うケースは、どのようなものがあるでしょうか。以下に該当する場合、変更を検討しましょう。
法律によって、産業医の職務は定められています。
そもそも産業医自身が役割の理解が足りず、「月に1度来ない」「面談を行なわない」などのケースがあるようです。
ストレスチェックは2015年から義務付けられた制度で、従業員50人以上の企業に対しては必ず行わなければならないチェックの一つです。この制度は、労働安全衛生法でも内容が記載されています。
内容は「医師、保健師または厚生労働省が定める人物による心理的負担がどれくらいかを知るための検査を行わなければならない」というもの。これによると、医師に相当する人物がストレスチェックの実務を行わなければならないということが読み取れます。企業でストレスチェックを行う場合、それに該当するのが産業医なのです。しかし中には「ストレスチェックの実務者についての契約は交わしていない」といった理由をつけてストレスチェックの実務者としての役割を果たさない産業医もいます。
企業がストレスチェックを実施していないことがわかった場合の罰則はありませんが、労働基準監督署への報告がない場合は最大50万円の罰則金を支払わなければなりません。この制度も、労働安全衛生法に定められている法律です。
産業医がストレスチェックの実務者とならなかった場合は、産業医の変更を考えるタイミングと考えても良いでしょう。
産業医の中には、企業に対して自身がどのような業務を行わなければならないのかを熟知しているのにもかかわらず、その業務を避けようとする医師がいます。とくに多いのがメンタル面の業務で、ストレスチェックによって高ストレスと判断された方への面接指導を避けるケースがあるのです。メンタル面での面接指導について、産業医側から「精神科医ではないから専門外です」と言われてしまうと、企業側から意見が言いにくくなってしまうことでしょう。
メンタル面での指導が必要だからといっても、すべての産業医がメンタルヘルスに対しての知識を持っていなければならないという条件はありません。元精神科医でなくても産業医となっている方は多くいます。だからこそ、メンタル面の指導を避ける産業医が出てしまう問題が発生するのでしょう。
契約した産業医がメンタル面での面談と指導を避けているのが見受けられた場合は、メンタル面の面談と指導ができる産業医との変更を考える必要があります。
産業医の資格を持つ医師ならばどの医師を選んでも大差はない、と考えるべきではありません。産業医の有資格者にもさまざまなタイプがあるため、産業医選びの際には、自社が求めるタイプの医師を選ぶことが大変重要です。
産業医選びにおける主な3つのポイントを見てみましょう。
産業医として豊富な経験を持つ医師を選びましょう。
一般的な勤務医や開業医に対し、産業医は業務目的・業務内容および相談に訪れる相手が異なります。業務内容や業務目的等が異なる以上、産業医として働いた経験が仕事の質を大きく左右すると考えましょう。産業医選びに際しては、契約候補となる医師が産業医として何年の実績を持つのか、過去に産業医として何回契約したのかを明らかにし、少しでも経験の豊富な医師の中から選ぶことが大切です。
産業医が行うべき業務は、労働安全衛生規則第14条第1項に具体的に規定されています。
産業医は、同規則に定められた各種の業務を行うこととなりますが、対応可能な業務・得意とする業務は、医師により異なることが少なくありません。産業医を雇用する場合には、自社が産業医に求める業務内容と産業医自身の対応可能な範囲がマッチしている必要があります。
自社が求める業務に詳しくない産業医を雇用した場合、ミスマッチにより期待した結果につながらない可能性もあるので注意しましょう。
自社の方針や産業医雇用の目的、企業理念、企業風土等を理解できる産業医を選ぶようにしましょう。
たとえば、産業医を選ぶ際の方針・目的として、自社への積極的な意見提示を求めているにもかかわらず、言われたことだけを淡々とこなすような性格の産業医では、自社の方針・目的に敵いません。
逆に、積極的な意見提示を求められたという理由で、企業風土を考慮せず強すぎる意見提示ばかりをする産業医の場合、自社との溝が深まっていく可能性もあります。
一度雇用したら長く関わっていく可能性のある産業医なので、自社のスタンスに合った産業医を選ぶことが大切です。
雇用した産業医が自社の方針や目的にマッチしていないと判断された場合、従業員の健康管理を適切に行うためには、速やかな産業医変更が求められるでしょう。しかしながら産業医の変更には、多くの手間や労力がかかることも理解しておく必要があります。
たとえば「産業医選任報告」の提出です。新たな産業医を雇用する場合には、医師との雇用契約を結ぶだけではなく、所定の産業医選任報告を作成の上、新たな産業医の医師免許のコピーおよび産業医証明書類を添付して、所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。提出期限は、旧産業医の解任から14日以内と定められています。
多忙な日常業務の中、14日以内に適切な産業医の採用活動を行って手続きを行うことは、決して容易ではないでしょう。
もし産業医を変更したいならば、産業医を紹介するサービスの利用も一法です。手間なく適切な産業医選びのため、ぜひ紹介サービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。
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